母字としての GT 書体

守岡知彦 / MORIOKA Tomohiko tomo @ kanji.zinbun.kyoto-u.ac.jp
2004年 1月 22日 (木) 21:56:10 JST


>>>>> In [chise-ja : No.00323] 
>>>>>	"上地さま" = Koichi KAMICHI <kamichi @ fonts.jp> wrote:

上地さま> 思い起こせば伏線はあって、昔GT明朝の製作下請け(リコーではな
上地さま> い、部品DB担当の会社)のひとが、「部品データベースなども、無
上地さま> 償公開は可能」(ただし、GT明朝を批判する意図でない場合、と私
上地さま> は読み取った)といっていて、そのときはピンとこなかったのです
上地さま> が、フォントは著作権を主張していないのですか…。

上地さま> 回答が文書で公開されているのですから、おそらく確定なのでしょ
上地さま> うね。これは驚きです。漢字部品として使うにあたって、そのまま
上地さま> ではKAGE内部データに変換できないのでKAGEとして使うには再トレー
上地さま> スする必要があります。ちょっともったいないですね。

上地さま> 大量にグリフ数があるので、部品ごとにアウトラインのまま分類し
上地さま> てデータ化し、もっとも近いサイズのものを少し拡縮して合成する
上地さま> 方が早いかもしれません。構造分解データさえあれば。

上地さま> もしくはGTもスケルトンで部品データを保持しているはずなので
上地さま> そのデータごともらえるなら、すばらしいですね。
上地さま> もっというと、GTグリフ生成システムも公開できるのだったら
上地さま> KAGEを捨てて、そちらに走れますが…
上地さま> (もし話が付くのであれば、それでもよいかも)

上地さま> CHISEとして、公式にお願いするのはいかがでしょうか?
上地さま> (スケルトンデータや部品合成システムなどの公開)

実は私も、文字鏡に懲りてから、2001年春に GT に関して問い合わせたことが
あります。その時の回答によれば、

Q.1 GT 番号及び font encoding の情報は自由に利用可能でしょうか?また、
    こうした情報を含んだデータベースを GPL で配布されるプログラムの一
    部として配布することは可能でしょうか?

A.1 無料公開であれば、GTプロジェクト名等、権利の所在を明らかにしてい
    ただければ、すでに LaTeX などのグループにお使いいただいております。

Q.1b 文字鏡などと同様に、GT 番号自体に権利が存在するというお立場なんで
     しょうか?

A.1b GT番号もfont encoding(該当フォントのどの位置に収められているか
     を示すS-JIS/JISコード)も本プロジェクトが公開している情報であり、
     <「GT書体2000」フォントそのものの再配布を伴わない限り>、
     同フォントの日本学術振興会による「使用許諾条件」の添付さえ不要で、
     GPLにより配布されるプログラム中に使用できると考えます。 

     また、「GT書体2000」フォントそのものの変換と(再)配布も同
     「使用許諾条件」の第4項により、東京大学文学部のGT管理者にメール
     で届け出るだけで可能ですが、「商用」についてGPLと同「使用許諾条件」
     の考え方がやや異なると思われますので、「GT書体2000」フォン
     トそのものの変換と(再)配布は、GPLによるプログラム配布とは別途行っ
     て頂くよう希望いたします。


Q.2 http://www.l.u-tokyo.ac.jp/GT/ にある「GT書体コードブック」のライ
    センスは何でしょうか?これは
    http://www.l.u-tokyo.ac.jp/GT/license.html にある「漢字データ」に
    該当するのでしょうか?また、これを加工して GPL で配布されるプログ
    ラムの一部として配布することは可能でしょうか?

A.2 詳しくは片山先生のほうからお答えしていただきますが、基本的にはGT
    フォントおよび付随するデータを商用に転用する際の当方の権利(著作権
    等は日本学術振興会に帰属します)の保護(留保)であり、大学機関等の
    公的使用であれば、当方としてもできるだけご協力したと思います。

A.2b = A.1b ?

A.2c 「GT書体コードブック(CDBOOK1〜4.HTM)」とは、上記「使用許諾条
     件」でいう「漢字データ」(実体はデータベース著作物)に含まれるデー
     タの一部をHTML形式で表記し公開しているもので、このデータを<加工>
     してGPLにより配布されるプログラム中に含めることは、「商用」にあた
     るとは判断していません。また、必要データも、わざわざ<加工>する
     までもなく、お申し出いただければ別途提供する用意があります。

ということです。この回答から、Q.1 が成立し、どうも公開している情報は
「使用許諾条件」に拘束されなさそうだと判断でき、XEmacs CHISE(当時
XEmacs UTF-2000)で GT をサポートすることが可能であると判断し、サポー
トを開始しました。また、フォントやデータは学振が権利を持っていて、「使
用許諾条件」に拘束されると言えます。その上で、GPL は「非商用」に該当す
ると判断してもらえそうですが、ちょっと不安な感じがしました。

GT のライセンスのいうところの「非商用」と GPL やオープンソース・ソフト
ウェアの文脈での『商用』の対応関係は良く判らないのですが、学振が知財権
を持っていることから国有財産法の問題が存在することは想像できます。そう
いう訳で、良くあるパターンでは、「学術目的なら自由に利用できる」という
ことになるんですが、「非商用」の意味を善意に解釈することによって、GPL 
なら OK という風に判断して頂いたのではないかと思います。国有財産法の意
図は国有財産を勝手に払い下げることを防止することでしょうから、占有的派
生物を防止する GPL はぎりぎりの線だと思います。

東京大学多国語処理研究会の担当者、責任者の皆様は善意を持って最大限好意
的に取り扱ってくれて頂いたと思います。「学術目的なら自由」では不十分と
する私の意図は、当時としては、理解しにくかったのではないかと思いますが、
誠実に回答して頂いたことを感謝しております。


ただ、某所で塩崎お兄ちゃんが書いてらっしゃるような懸念や、東京大学多国
語処理研究会の意向とは別に、国のプロパテント政策などの動向によって、東
大や学振が方針を変えるという危険性が潜在的に存在すると思います。

;; ちなみに、京大の場合、3年間収益を得られなかったものは作者の元に帰
;; るというルールができるそうです。なかなか微妙。シンポジウムと説明会
;; には行って来ようと思ってますが(忘れなければ(^_^;;)。


私としては、GT を使うとしてもいつでも切り離せるようにした方が良いと思
いますし、仮に GT のデータやシステムが公開されたとしても(でも、こうい
うのは外注先との契約条件にも寄るので、想像するに、システムのソースは難
しいような気が。データは可能かも知れませんが)、慎重に扱った方が良いと
思いますし、また、KAGE の開発は続けて頂いた方が良いと思います。KAGE の
データに関しても、可能なら、より安全な条件・資金を用いて独立に作成した
方が良いと思います。

;; 科研や COE もそういう意味では危険性がありますが、師さんのように
;; proposal にライセンス条件を明記するような方法は良いと思います。また、
;; 未踏はこの種の危険がないので、フリーなライセンスを実現する上で良い
;; 方法だと思います。

ただ、KAGE のような字形合成システムを研究する上ではデータは大いに越し
たことがないので、GT のデータの利用を考えることは有益だと思います。

;; でも、得てして、曲がりなりにも動くものができちゃうと、再実装する気
;; 力がなくなるもので。RMS 先生がおっしゃるようにフリーソフトウェアの
;; 実現のためにはリプレースの努力を惜しんではいけないんだけど、凡人に
;; は辛い。そういう意味では、自分の作ったものでも平気で再実装してしま
;; う半田さんを尊敬します。

税金で作ったものは公共へという考え方と、税金で作ったものからは最大限利
益を回収すべしという考え方がせめぎあっていて、どっちかといえば、後者の
論理の方が優性な現状では、公的助成やその成果物の取り扱いはなかなか微妙
な時期だと思うのですが、賢くより社会のためになるように振舞えれば良いな
あと思っています。

;; いざとなったら大学をやめて島根に行こう!?(嘘)

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