素性について
守岡知彦 / MORIOKA Tomohiko
tomo @ kanji.zinbun.kyoto-u.ac.jp
2004年 1月 5日 (月) 18:44:52 JST
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
;; [業務連絡] 新年早々で申し訳ありませんが、「書体・組版ワークショップ」
;; の講演者の方で、原稿まだの方は早めにお願いします。
>>>>> In [chise-ja : No.00301]
>>>>> "江渡さん" = Kouichirou Eto <2004 @ eto.com> wrote:
江渡さん> おそらく質問は二つにわけられると思うのですが、
江渡さん> Chaonモデルとはなにか? というのと、
江渡さん> 素性とはなにか? ということの二つかと思います。
江渡さん> また別の話でいえば、素性という言葉は言語学の言葉を借りてきて
江渡さん> いるわけですよね。それはどこかの辞典かなにかに定義はのってま
江渡さん> すでしょうか? 要するに論文で素性という言葉を使ったとき、そ
江渡さん> れをどういうい意味として使っているかをあきらかにしたいわけな
江渡さん> ので、どこかにreferする先があればそれでいいかと思うのですが、
江渡さん> どうでしょうか。
音韻論の弁別素性関連でなく、Chomsky 派の「統率と束縛」(GB) 理論におけ
る用語での例で、かつ、手元の 東条敏 著「自然言語処理入門」での孫引きで
申し訳ありませんが、GB 理論における X バー理論では品詞に相当するものを
N と V の2つの feature の +/- の組合せで表現します。
| +N | -N
--+------+------
+V|形容詞|動詞
-V| 名詞 |前置詞
この名詞をCHISE 風に書けば
((ps-category . 名詞)
(名詞性 . t)
(動詞性 . nil))
となるでしょうか。
同様に、Generalised Phrase Structure Grammar (GPSG) でも X バー理論を
拡張したような feature を持ち、性や数なども feature としてます。また、
ここでは [feature名 値] の組を与えることを feature specification と呼
ぶようです。また、feature 指定の集合間の和集合を作ること(「feature の
統合 (unification)」)や feature の extension, feature の
instantiation など師さんが Chaon モデルの性質として述べているのと同様
な概念を持っているようです(形式的な面を荒っぽくいえば、Chaon モデルは
GPSG から階層性を取り除いたものといえるかも知れません)。
ところで、
>>>>> In [chise-ja : No.00300]
>>>>> "師さん" = Shigeki Moro <s-moro @ hanazono.ac.jp> wrote:
師さん> 私の理解では、素性と属性の違いは、後者が何らかに帰属する性質の
師さん> もの(付随的なもの)であるのに対して、前者はそうではない、とい
師さん> うことだと思っています。例えば、Unicodeのプロパティテーブルが
師さん> なくなってもコード値がなくなることはありませんが(実際、ISO
師さん> 10646にはコード値しかない)、Chaonモデルの場合、素性が一個もな
師さん> い文字オブジェクトはあり得ない、ということです。
に関しては私も同様な理解をしています。
また、属性と訳される property と attribute のうち、前者が帰属的・所有
的なのに対し、後者は外形的・象徴的なニュアンスを持っていると思います。
P.S. 実をいえば、江渡さんの論文で、何で素性を属性で説明しようとしてる
んだろうかと思いました。属性と素性は違うドメインでの概念で、同じ
世界に両方出てきてニュアンスの差を定義しないと行けないはめになる
ことはあんまりない気がしてたので。
もしかして、過去に文字属性と書いていたので混乱させてしまったので
しょうか。それとも、符号化文字モデルを前提にして Chaonモデルを説
明したいからでしょうか。
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